昔話

自分の書いた小説には感想を貰えないと思ってる。

そう思っていた方が精神衛生上良いからだ。

だけど、他の人が書いた小説には出来る限り感想を伝えたいなと思う。

 

昔話をしよう。

素敵な文章を書くフォロワー様がいた。

彼女と私のジャンルは一部被っている程度だしそこまで頻繁にやり取りする仲でもなかった。

それでも彼女の書く文章は良い意味で読みやすかったし香り高い文章とでもいうのか、品を感じた。

そのうちじっくり読んで感想をお伝えしたいな、なんて思っていたんだ。

彼女も私も読書が趣味で本屋さんや図書館、学校の図書室で何時間でもいられるタイプというところが一致していたからか、何かの拍子に彼女がこんなようなことを言った。

「私たち、似ていますね」

 

ある時その彼女がTLに姿を見せなくなった。

浮上のタイミング合わないのかそれとも多忙なのかはわからなかったけど、確か3〜4日姿を見なかった。

またそのうち浮上するだろう、くらいに軽く考えていた。

 

彼女が姿を消した数日後。

久し振りに彼女のツイートを目にした。

 

「(彼女のアカウント名)の娘と申します」

 

……え?

そのあとこう続いた。

 

「母は、某月某日に他界しました。

 生前母と仲良くしてくださってありがとうございました」

 

思考が停止した。

嘘だと思った。

だけど、その後彼女が再び呟くことはなかった。

 

私はすごく後悔した。

感想を伝えられなかったことはもちろんのこと、「素敵な文章をありがとうございます」「次回作も楽しみにしています」という言葉すら伝えていなかったことを。

すごく親しくはなかったし彼女の文章を全部は読めていなかったけれど、彼女の文章を楽しみにしていた人間がここに一人いることを……伝えられなかった。

 

彼女が私の小説を読んでくれていたかどうかは今となってはわからない。

もし読んでくれていたとしても、感想をくれたかどうかはわからない。

 

だとしても。

 

私は彼女の作品のいち読者として感想を伝えるべきだったし伝えたかった。

 

今でも他の人が書いた小説全部に感想を伝えられているわけじゃない。

いいねやRT、ブックマークすらしないこともある。

それでも、「あなたの作品を楽しみにしている人間がここにいる」ことを、出来る限り伝えていきたいと思ってる。

それが彼女に対する供養であり、贖罪──この言葉が相応しいかどうかはわからない──だから。